=終章= |
「来たれ!雷!」 アポロが叫び、剣を突き上げる。呼応。空がわななき、男に一筋の紫電が落雷。その身を焦がす。 と、確信もてる一撃であったのにも、かかわらず、紫電が霧散した。 男の周囲に、何かが浮遊する。 水、であった。 水が上部から降り注ぐ雷を受け止め、蒸発と四散でその威力の全てを奪い、男を守った。 悠然と降り立った男。そして、深い深い息を吐く。 深い深い息は、徐々に白く煙り、…すっと吐くのをやめた男の口元は、それでも白い蒸気のようなものが立ち上る。 いや、蒸気ではない。証拠に、アポロの頬が肌寒さに、引きつりが起こる。 直感。アポロは、その場を飛びのいた。 刹那、アポロの立っていたその場に、彼を串刺さんと巨大な氷槍がそそり立つ。 飛びのいた先、アポロは足を止める事無く、跳ね下がる。 その場にまた、氷槍。 繰り続ける氷槍の群に、アポロは逃げの一手を余儀なくされ、しかし、一瞬の狭間、大地に足をつける機会を狙い、紫電撃を放ったとしても、男の周囲に漂う水幕が霧散し、吸収していった。 状況は、アポロにとって、不利になる一方である。 |