=終章=
[終焉との決別]
第39話・赤の138標

 

「よかったのかね…」
 しわがれた声…。それが魔物と言われる物の声である。
 その目の前には、倒れ伏したアポロ。
 ただ、その体には傷一つなく、…その場で眠りについたように、倒れ伏していた。
「これで、よかったのかね?と聞いているのだが…」
「…芝居のご協力、ありがとうございます」
 再度、魔物と言われるものが、苦々しく口を開き、少し腹立たし気な口調でもって、問い直す。
 と、アドベルがゆっくりとたちあがり、そう答えた。
「私がこの山に登った事実、そして、貴方の元より持ち帰った事実、それをアポロに刻み付けれました」
「よもや、[人間]を欺き、次回の主役を連れまわすとはな。そうまで、する必要があったのか?」
「私に対し、…なつかせるための所業ですよ…。罵ってくださってかまいません」
 アドベルと、魔物と言われるものがいくつかの言葉を交わし、最後の、アドベルの言葉でもって、魔物は唇を閉じた。そして、「…、まあ、それもよかろう。」と、溜息を洩らし、言葉をつなげた。
「しかし、もう少し、眠らせる場所は考えてやるべきではなかったのかね?ほれ、鼻の頭をすりむいておるぞ」
 その魔物のあきれた口調でアポロを指さしてみせると、…ちょっとだけアドベルは笑った。
「確かに。…ですけど、あなたに彼の剣を当てたくはなかったんですよ。エラブの父でもある…貴方へは」

次に進む/読むのを終了する