=終章=
[終焉との決別]
第52話・赤の150標

 

「スティア様、よろしいのですか」
 洞窟を後にする二人の女性、エディルが前を行くスティアに声をかけた。
 そう、その場にはアポロの姿はない。
「アポロ殿を独り残して」
「彼は今、独りの時間が必要と言えます。…何もかも、彼は失ったのです。父も母も、兄も、…彼は独りです。でも、彼を独りにさせない存在が私達です。その私たちは、彼を英雄という形で見ているのです。彼は英雄でも何でもないのに、…彼を独りにするのは、英雄を忘れ去れるため、彼をただのアポロにしてあげる必要があるんです。エディル、それをわかってあげてください」
「…、…。…」
 その言葉に、エディルは立ち止まり、振り返る。…その[AGOTOW]がいた洞窟を、独り残ったアポロを見つめるように、
「スティア様、…私には、王女へ報告する勇気がありません。…全てを、報告する勇気が」
「私もよ、…でも、全てする必要はない」
 スティアは立ち止まり、背中で言葉をつづけた。
「[AGOTOW]の脅威は終わった。残念ながら、アポロ殿は、[AGOTOW]と刺し違え、絶命した。…それでいいのです」

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