=閉幕=
第10話・赤の155標

 

 一瞬、全てが凍り付く空気が張り詰める。
「スティア、貴方はそのまま、アポロのそばにいるべきでした…。その意味が分かりますか」
「王女、…」
「アポロは英雄ではない。ただただ戦いも嫌う青年で、でも、ただただアドベルを大切にしていた、アドベルの…彼の弟だったのでしょう。そのアドベルが死んだのでしょう。そう、もうアポロは、…独りなのでしょう」
「!!」
「スティア、貴方は戻るべきではなかったのよ」
「クリス、私は…私は、…あぁ、…私は」
 クリスの言葉に、スティアは気付いた。エディルもまた、その言葉に、唇をかんだ。
「わ、私は、彼を英雄にしてあげたくなかった…英雄にしたら、アポロは、苦しむから、…私は、英雄にしないために、…私は彼を、独りに…独りに…独りに!!私は、…アドベルに、アドベルに、アポロを託されたのに、…私ができる唯一の償いを…独りに…」
 言葉を反芻する、スティアの手から、黄色いリボンが零れ落ちた…。
 クリスは、そのスティアの懺悔を聞き、…背を向けた。視線を窓の外に向ける。
 ただ、青く輝く、空を…見つめ。

  すてぃあが、…さいごに、つぶやいた…

  何のために戦ったのでしょう…
  何かのために戦ったのでしょう…

   でも、そこに何が残ったのでしょう…
   そこに何があったはずでしょう…

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