=閉幕=
第13話・赤の158標

 

「トゥアを救出したその日から、…トゥアは深い深い眠りについていたの。…魔法的な力か、もっと違う力か、で。二度と覚める事のないかのように。それを知れば、当時のスティアは、アドベルを再び、拷問にかけた事でしょう。無論、私もまた、アドベルがそうしたであろうとも、気づいていた。…でも、だからこそ、…私は、トゥアをそのままにしていた」
 クリスの言葉に、スティアが顔を上げる。
「トゥアが目を覚ましたのは…、そう、二日前…、北の方で強烈な閃光が起こり、…その波動が、この城にまで到達したその後でした。…そう、[AGOTOW]がいなくなった。皆が認識できる程の出来事の最中、トゥアが目覚めたの」
「クリス、それは…」
「スティア、それを私は、…アドベルは、私達のために、何かを成し遂げた。…と、思ったの。きっと、それは、…私たちが思いもしない何かのために、私達をだましてでも、私達を欺いてでも、…私達に、危険が及ばぬように、と。そして、トゥアを眠りの奥地に潜ませたのは、戦いに疲弊していく私達を見て、笑顔を失われていくかもしれない事が悲しかったのかもしれない。だから、アドベルはトゥアを、…。」
 そこまでを語りきったクリス、…の頬に、涙がつたい、そして堕ちる。
「全ての終わりは、それと同時に、私たちは、…アドベルを、失った…事を示していることも、私は、なんとなく、分かってしまったの」 
  クリス王女は、スティアの手を取った。そして、エディルの手を握る。
「ご苦労様、私とトゥアと、王国のために、…二人に、そして彼らに、…本当に、つらい思いをさせてしまった。

 私は、その事を、言葉でしか、詫びることしかできない…
  でも、だからこそ、残された私たちは、生き抜いてみせましょう

 」

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