=閉幕=
第15話・赤の160標

 

「私は、独りにさせた、と言ったのよ。…スティアが別れる間際に何か言ったのは、確かでしょう。ならば、アドベルと同じく、優しい彼は、…スティアを待っているでしょう。…必ず、ね」
 その説明に、エディルは少し呆然とし、それから、湧き上がる何かでもって、憤怒の表情が浮かぶ。
「いいじゃない、エディル。だって、アポロは絶対ではなくとも、生きている方が高いのでしょう」
 さらに、クリスは軽口めいた言葉を放ち、言葉をつづける。…ただ、その続けられた言葉は、エディルの湧き上がる憤怒を完全に削ぎ落す事となるものだった。

「私と、トゥアは、完全に失ったのよ。待ち望んでも、待ち望んでも、永遠に…待ち続けても、…失ったのよ」

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