=記章= |
マグデス王は、溜め息の理由をそうすり替え、…空を見上げる。 「そうですわね。お父様」 本意を知るか知らぬか、…実は、気づいているだろうと、思わせる微笑みのクリスだったが、 「この空模様、この所、続いておりますものね…。城下の皆も、不安がっておりますわ」 と、言葉を濁らせ、その澄んだ藍の眼を城下に向け、そして、軽く伏した。 「…、…。そうだな。何事と、なければよいのだがな…。」 王は彼女にその返答した後、雲の合い間より紫電煙る様さえも臨めるその空模様に、…目を細め、…唇をクッと閉める。 そう、一つ言いかけたその単語を、喉奥で収める為に、…。 言ってしまえば、現実味を帯びてしまいそうであったから…。 |