=第一章= |
アポロ達が城に配属され、数ヶ月が過ぎた。 その日は、いつにもまして、空がくすみ、風が何とか動かすような重苦しく湿った空気が辺りを包んでいた。 何よりも、城下町を離れた位置ながら、不穏な雷鳴の光が走り、程なく、怒音が城下を揺らす。 何時にない程の異様な風景に町の人々は不安を語り合い、それはゆっくりと感染し、…固まる前の その町人に感化されまいと、アドベルとアポロは城下と外を繋ぐ、大きな跳ね橋門の前で、番を勤める。 そうして、…何事もないと思うアポロに、「ちゃんとしないと」と、口元をしかめるアドベルの元、に。 一人の男が城下を目指すように、現れた。 「大丈夫ですか!」 男の歩く後には、大きな
アポロも続き、抱えるアドベルの後ろにつく。 アポロは思った…。 「アポロ、救護兵を!」驚嘆に体強張るアポロに、アドベルは憤怒にも聴こえる指示を出し、男に力強く声をかける。 その時…。「王に…」と、残っている手に握られ、半分ひしゃげた包み紙を、アドベルの肩越しから、アポロにと、残された力少なしとばかりに震わせながらも、差し出した。 アポロはその包み紙を受け取る。…握られていた手にも滴っただろう血で、包み袋の半分は赤黒く染まっていた。 「アポロ、急ぐんだ!早く、救護兵と、…!その手紙をマグデス王へ!!」 アドベルが叫ぶ。 「大丈夫です!気をしっかり!大丈夫ですから!!」 空は変わらず、くすみ続け、雷の怒号と紫電が走る。 |