=第一章=
[A Hit of Hunch]
第2話・黒の14標

 

 マグデス王が自室にて、記録書を書いている時であった。
 息を少し高揚させるケルバーが「失礼します」と、敬礼のち、その足を王へと向かわせた。
 外の不穏な雲行きに、少なからず、胸騒ぎのしていた王にとって、この来客は…あまりに気分の良いものではなかった。
「何用ぞ…」
 不機嫌さを悟られぬよう、唇を薄く開け、書に目を向けたままに、ケルバーに問うマグデス王。
「北の駐屯部隊より、緊急伝令です」ケルバーももちろん、その事は承知の上ではあったが、重くも口を開き、手に持つ物を王の視界の隅にと入れる。
「この小文を届けた兵は、先程…息を引き取りました…」
「…、…そうか…」
 握り潰された包み紙の半分が赤黒く染まるソレこそ、…アポロが受けとったものである…。

 包み紙には何も書かれてはいなかった…が、その紙の隅に描かれる文様を見れば、
 王はその手紙の重要性がわかる。

  包み紙に書かれた文様は、炎…。緊急を現す文が内封されている事を示す。

 血に染まる袋を受け取り、固まり中身までも破りそうな袋を破きとる。
 部分は袋につき、破れとれ、また同じく真っ赤に染まていた手紙であったが、王は書かれている文章の節々を見つめ…、そして、…目を伏せた。

「城下と兵士に通達せよ…」

 重苦しく唇を開くと、…肺にたまる湿気た空気を吐き、…ケルバーにと、伝令する。

「全城壁門を直ちに封鎖。及び、貴重品と女子供は城へ隔離。町下の男は火災予防と司令部の設置、ならびに武器装備の準備。そして、全兵に北を中心とした城壁前の防備を…だ」

 ただならぬ雰囲気に、ケルバーは、失礼とは分かってはいたものの、無言にそれでいて目で問い質す。
 もちろん、本来であれば、厳罰を命ずる事もある行為であった…。
 しかし、王はそのケルバーの行為を許し…、そして、最後に、彼の問答への答えを述べた。

「[AGOTOW]の封印が解かれた…。それを伝える文章、よ…」


次に進む/読むのを終了する