=第一章= |
ケルバーが退出し、幾刻と後か、王の自室のバルコニーより臨める城下町を含め、城中庭に人々が押し寄せる。 喧騒、怒号、悲鳴、泣き声…。入り混じった暗く悲しい音響が、王の耳を打ち、目を暗く眩ましていく。 「…この戦い、…如何ほどのものか…。そして、…幾人が死んでいくのか…」 …呟き、目を伏し、…それから、自らの部屋を顧みた。… ケルバーもいなくなった部屋は執務以外に使う事のなくなった自室である。 その昔は、妻であるマリア女王も住まう部屋であった。 その妻が居なくなり、…久しく、気持ち向き合わず、…避けてきた部屋に、 再び、足を踏み入れた…。 |