=第一章= |
部屋の一角。 そこは、使用人にも掃除を行わせない、…王にとって負の領域。 なのに、王は、一歩、…一歩と、その場に歩み寄る。 日の光も届かない、そこには大きな宝物をしまう頑強な木製の箱があった。 「出来うるならば、生きているうちに…もはや着る事はない、と…思うてたものを…」 そう、一人語り、その取っ手にと手を置いた。 引き上げられる箱の蓋。 長らく、開かれる事のなかったそれは、重く、ただ重く、王の手に圧し掛かり、 一部錆びついた部位が引き裂かれ、ギリギギィ…、と、音を立てる。 そして、現れたのは、真っ白な鎧と、一振りの赤い鞘に収まるロングソードであった。 |