=第一章= |
「お父様」 箱の中身を確認し、…重く閉ざした瞳を開き、その鎧に手が触れた時である。 音立てず開いた扉の元に、甲冑を身に纏ったクリスが立っているのが、王には分かっていた。 「ならぬ。クリス」 だからこそ、振り返りもせず、視線を鎧に落としたまま、王はそう答えた。 「どうしてです、お父様!」 「ならぬものはならぬのだ」 暗闇で膝着く王と明るさの差し込む扉の元に立つクリスの言葉が交わり、相互の光闇にと消えていく。 「クリスよ、お前の国民を思う気持ちも分かる、戦陣をきり、名を上げたいのも分かる」 「では」 「だがな…、私が倒れた時、なんとする…」 王の理解ある言葉に、クリスはだからこそ、と切り出すよりも先に、王はそう諭した。 |