=第一章=
[A Hit of Hunch]
第7話・黒の19標

 

 空が淀むも部屋に微かと差し込む陽光の元、王はその白銀の甲冑にと腕を通していく。
 その袂にはクリスが座り、王の甲冑の着こなしの補佐をしていく。
 そんなクリスのしおらしい佇まいに王は「ふふ、ふ…」と、含み笑いを漏らす。
「よもや、今、着付けを手伝うのが、あの男勝りな我が娘かと思うと、愛らしいものよな」
「お父様…」
「すまなかった、クリスよ」
 腕甲の具合を確認しながら、王は呟くような様でクリスに話す。
「トゥアにもだが、…私は父親らしい振る舞いをしていなかったなぁ…」
「…、そんな事はございません、お父様。お父様のがんばりは、すべては国民の為ですもの。国民の喜びこそが、私やトゥア、姉妹の誉れ」
「…、お前達を叱るばかりで、何一つ笑顔もやらず、執務に励み、…もう、この齢…。マリアも悲しむか」
「お母様がそんな事を思いになるはずがありません。お父様。悲しい顔をしないでください…」
「…、…」
「その悲しい顔をされれば、お母様も悲しみます」
「ふふ…、ふ」
 数個のやりとりに、…王はクリスを見て、「ありがとう」と、言い、次の言葉を続けた。
「やはり、お前はマリアの娘。男勝りを飾ろうと、お前の優しさは母と同じものを感じさせる」

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