=第一章= |
空が淀むも部屋に微かと差し込む陽光の元、王はその白銀の甲冑にと腕を通していく。 その袂にはクリスが座り、王の甲冑の着こなしの補佐をしていく。 そんなクリスのしおらしい佇まいに王は「ふふ、ふ…」と、含み笑いを漏らす。 「よもや、今、着付けを手伝うのが、あの男勝りな我が娘かと思うと、愛らしいものよな」 「お父様…」 「すまなかった、クリスよ」 腕甲の具合を確認しながら、王は呟くような様でクリスに話す。 「トゥアにもだが、…私は父親らしい振る舞いをしていなかったなぁ…」 「…、そんな事はございません、お父様。お父様のがんばりは、すべては国民の為ですもの。国民の喜びこそが、私やトゥア、姉妹の誉れ」 「…、お前達を叱るばかりで、何一つ笑顔もやらず、執務に励み、…もう、この齢…。マリアも悲しむか」 「お母様がそんな事を思いになるはずがありません。お父様。悲しい顔をしないでください…」 「…、…」 「その悲しい顔をされれば、お母様も悲しみます」 「ふふ…、ふ」 数個のやりとりに、…王はクリスを見て、「ありがとう」と、言い、次の言葉を続けた。 「やはり、お前はマリアの娘。男勝りを飾ろうと、お前の優しさは母と同じものを感じさせる」 |