=第一章=
[A Hit of Hunch]
第29話・黒の25標

 

 大振りの棍棒。横を払うように、振り降ろされるソレにアポロは、時計の針が9時を指す辺りよりゴルフスイングし、直撃する軌道の棍棒の節に剣を切りいれる。
 剣は、まるでチーズを裂くように棍棒に入り、スパンっと根元から切り分ける。
 手ごたえの無い[Violthi]は怒り、その手を振り上げる。
 すぐさま、アポロは剣を持ち直し、その迫り来る拳に対して、突き上げた。
 剣先が接触した瞬間、[Violthi]の拳が消え去り、腕の半分が霧散する。
 驚き慄く[Violthi]へアポロは飛び込み、そして、その片足を輪切るように払う。
 片足を失った[Violthi]が倒れこむのに、アポロはその切っ先を天にと向け、心臓を突く。

  [Violthi]が啼く。

 啼いて、そこを中心に、空気に貪り食われていくかのように穴を開けていき、
 その体全てが消えた瞬間、

  遠くの空に光の線が立ち上る。

 それに呼応するよう、[AGOTOW]の全てが動きを止めた。
 そして、光の線を中心にするように、まるで風化した土器の如く、砂となり、風にと吹き飛ばされ、

  全てが無と化した…。そう、…全ての[AGOTOW]が…無と化した。

 残ったのは、傷ついた兵士と、死んでいった兵士と、…息のない王の死骸と

  勝ち鬨とも、絶叫とも、とれる、吼え続ける、アポロの姿のみであった…。


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