=終章= |
洞穴に向かうほどに、アポロは思い直す。 ここまでの道筋を…。 [AGOTOW]との初めての戦闘にて、自分の目の前で、王を助けられなかったこと。 二度目の戦闘では、自分の行動が間に合わず、無念に散っていった同僚たち。 果たして、それで、本当に自分が英雄と呼ばれてもよいのだろうか。 救えなかった命の多さ…。それを思うと、その表情にも影が落ちる。 「アポロ殿」 スティアが声を上げた。 「救えなかった命を今、憂いても仕方ありません。アポロ殿は、神ではないのです。人なのです。…力及ばず、もありましょう」 そして、彼女は見上げ、こう続けた。 「しかし、貴方様がいたからこそ、私たちはこうしていられる。貴方様が先頭に立ち、[AGOTOW]をうち滅ぼさんと、先導したからこそ、私たちは、立ち、希望を持ち、戦えていられるのです!」 彼女の言葉に、アポロは軽く目を伏せ、天を仰ぐ。…そして、ゆっくりと目を開き、…黒くどよめく瘴気とその雲模様を視野に入れた。 「…僕は結局、英雄にはなれないし、英雄にもなれはしない。…皆が、掲げ挙げられたとしても、僕は結局、一人の力では何もできない…。それでも、指標…となるくらいにはなれるんだろうね。戦い勝つための…」 洞窟の奥、…どよめきが起こる。…。 幾つもの、いや、…幾千ともいえる二つの赤い瞳がギラギラと輝いていた。 [AGOTOW]の軍勢が、その場より、たった3人に向って、進軍を開始しはじめた。 |