=第1章・第2部=
真吾

 

 かくして、自分達は父親の説明の後、この[時空間]にと家族総出で踏み込む事になった。
 生体が存在できるはずのない[時空間]に、自分達は、この家族だけを囲む小さな小さな暗黒色の防護膜だけでー。
 もしも、この防護膜が無くなれば、家族みんな[時空間]の激流に流され、全ての世界から消える。「なかった」事になる。

 ところで、なぜ、そのような所に、自分達は訪れなければならなかったのか?
 それに対しても、父親は簡単で簡素で単純明快な答えをくれた。

  「兄を追い、祖父が旅立った平行世界に、行く」

 自分が「なかった」事になる、考えうるだけでも最低な結末のあるストーリーを用意されているにも係わらず、家族誰も拒否をしなかった。
 もちろん、自分もまた、その言葉にうなずきをもって返し、二の腕をまくり上げる意気込みを見せてもいる。

次に進む/読むのを終了する