=第1章・第5部=
真吾

 

 不意に、父親が片手をあげ、自分に合図を送った。
 到着を知らせる合図だ。待ち望んだものだ。
 しかし、安易に喜ぶ項目ではない。これから、世界に入るのだ。
 言うならば、大暴風雨の中、転覆寸前に大暴れする大船に、木の葉の如き小舟でもって、接船し、乗船する、ようなものだ。
 なかなかにスリリングな事である。一舵でも間違えば、繰り返すようで悪いが、[なかった]事になる。

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