=第1章・第8部=
真吾

 

 中指奥の暗黒色が若干、光を帯びている。
 魔法障壁が力を上手く伝えれなくなった指先から綻びだし、[時空間]が侵入を試みだしたようだ。
 裏返ろうと暴れる焦点を失いそうな瞳を押しとどめ、中指の腹がこちらにこむら返っていき、今や痛覚なのか何なのか分からないもので絶叫をあげそうな口元を歯茎破れ血飛沫が溢れながらも食いしばる。
 絶望に絶望を上塗っていく。それでも、まだ脳はあきらめを拒み、魔術構想で絶望の二文字を塗り変えようと…。ただただ、足掻いた。
 
  足掻き、足掻き、足掻き、足掻き、足掻いて、足掻き!!

 その足掻く中、強い衝撃が前方から襲い掛かり、体の後ろにと通過していく。と、
 ふっと、…力が抜けた…。なぜ、抜けた。
 衝撃のくらみが消え、自分の左手首先が無い事を、左の瞳が理解した後、瞳はもう一つの事象を捉えていた。
 暗黒色が手首ほどの大きさで、ぽっかり、…と、抜けていた。

   ああ、障壁が壊れたのか…。

 と、自分は悟った。そして、

   [時空間]とは、こういう世界なんだ。


 と、ただただ煌煌と輝く光を左の瞳で見つめ、脳の奥がそう呟いてくれた…。つまり、脳はあきらめた。と自分は、悟った。

  光が迫る。光が迫りくる。
 自分が消える。[なくなる]。…そう、[なくなる]。

   けれど、…
    自分の左目だけは…まだ
     足掻いて…足掻いて、足掻き、足掻いて…

  そして、自分は、知らず[大声]をあげていた。

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