=第2章・第1部=
訪れ

 

 原線路界町。そこは、大都市から離れ、山奥にある人口百数名程の小さな小さな町である。
 交通の便といえば、丘の上にそびえたつ私立原線路界第二学校と原線路界駅を結ぶ大通りと、町の上を通るであろう建築途中の高速道路だけ、である。
 日本の喧騒めいた日々とは無関係を決め込んでいるような町ではあるが、しかし、その実質は日本の経済を担うともいえる財閥[Shadow-Blain]が運用している。
 その割には、…なんとものどかを通り越した閑散たる風景であろうか。大通りの商店街は、閑古鳥さながらシャッターが軒並みに下がり、住民がちょいと入用があれば、ガラガラあがる程度で、後は田園風景が広がるばかりである。
 無論、駅には電車などというこじゃれたものはなく、朝に1回、昼には2回ほど、夕夜かけて2回。程、蒸気で走る機関車が通る程度。
 ならば、学校はといえば、[Shadow-Blain]の髄をつぎ込んだかのような高層建築物である。
 中高一貫の学校で1学年に10クラスを有した巨大な鉄筋コンクリート製。さらに、その中央には、町の図書館・病院も兼用の総合福祉施設が塔のようにそびえ立っているのだ。
 そんな過疎のようで、しかし、過疎にも思えない建物を持つ、この原線路界町に、…。
 そして、これはそんな町に、もうすぐ季節の到来を知らせる雪が降るとも降らないとも、言える、寒い寒い寒波が上空を行き来する季節の話である。

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