=第2章・第4部=
訪れ

 

「奈々美、あんたは、おば様の店を潰す気!?」怒髪天に昇る…、かのように、久美の髪が上部に揺らめいた気もした。
「…、いい加減になさい…」
 そして、テーブルに積み上がる小皿の山を、指の先にまで血管が浮かびあがってそうな手で力いっぱいに指さしてみせる。
 その山は、10や20といった数ではない、店にある全ての小皿を出し切ったかのような、…6人家族くらいが回転寿司にでも食事したかのような山である。
 本来なら、食べきったケーキ皿は回収し、新しい皿を出す所だが、久美はあえてそれをせず、奈々美の前に皿を積み上げて見せ、抗議を示していたのだが、奈々美は平然としたもので、出された皿のケーキをペロペロリ〜ンと食べ舐めていく(実際、積まれていく皿は顔の映りそうなピカピカ?カピカピ?感があった)だけであった…ので、とうとう、声をあげてしまったようである。
 ただ、そんな久美の怒りも、奈々美には大したことではない模様で、彼女は顔を久美の視線から外すと、「おば様〜、不良店員ですよ〜」と告げ口いて、店主に催促してみせる。
「別に、いいでしょ〜お?おば様〜」
「…、そうね」矛先が自分に向いた事で、新聞越しに笑っていた顔を、ほうれい線を軽く歪めた微笑みに変えてから、新聞を下ろし、二人を見て、立ち上がる。
「今日は、生憎の天気だし、お客様は来ないでしょう。それに腐りものだしね」
 と、冷蔵庫から新しいケーキを取り出し、カウンターに置いた。

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