=第3章・第2部=
原線路界町

 

「ねえ、久美ちん」
 [Rain-Bow]を出て久美の家に向かう雨の中、同じセーラー服姿に着替え傘を差してくれている久美に奈々美は声をかけた。
「ママの知り合いで、久美ちんのママの知り合いって、どんな人だろうね」
「…、さあね」
 奈々美の質問に、久美は興味なさそうな返事を返しつつ、雨の町を見つめ、「だいたいさぁ…」と、自分にでも聞かせるような呟きをもらした。
「だいたい、私の母さんもそうだけど、智恵美先生…、あなたのお母さんもそういう事、今まで口にした事がないじゃない」
「…、そうだね。確かに」
 久美の質問返しに、奈々美も、うん、とうなずいて、「ここの町の大人の人って、なんか昔話を全然しないね…」と、彼女もそう呟く。

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