=第3章・第8部= |
「到着〜」「奈々美、お礼!!」 大きな門構えを前に車が止まると、いち早く奈々美は飛び出したのに久美は反射的な怒声を向ける。 が、そんなのしった事ではないとばかりに、ヒュ〜ンと奥の玄関に走っていく様には、奈左水も苦笑を見せる。 「車は裏手に置いてくるから、ナウも久美も降りなさい」 その苦笑を交えながら、奈左水が言うので、久美は「ありがとうございます」そして、ナウが「あいよ」と、各々で答えて、車を降りる。 「どうした、機嫌悪いな」車が移動を開始した時、ナウがそう久美に声をかける。 「さっきの事、引きずってるなら」「そうじゃないわ」「…っそ、なら良いが」 ナウの言葉に、否定を入れる久美。ただ、それでも、視線は何かでもって、不機嫌さが浮かんでおり、 「ただ、なんだか気持ち悪い…みたいな感じがするのよ」 そう言って、歩き出す。 「気持ち悪い…、ねぇ」その久美の言葉に、ナウが鼻で息を抜いたような小声で答え、肩を怒らせるように振るわせて、「いやはや、ごもっともで」と、これも彼女に聞こえない小声を漏らし、歩き出した久美について歩き出したのだった。 |