=第3章・第12部=
原線路界町

 

「久美!」
 久美の言葉に、声を上げたのは、又、奈々美であった。
 ただ、いつになく、彼女の語気は荒く、思いもよらない強さに、久美は眼を見開き、菜々美を見返し…、た。
「失礼よ、久美。真吾君達は、今日はお客様よ。それに事情あっての事でしょう。それを何?」「ありがとうございます、九白さん」
 もう一言言いかける奈々美を真吾は言葉で遮った。それから、笑みを浮かべた右半面だけを向け見せ、言葉を紡ぎだす。
「水沢さんの申す通り、確かに、そうでしょう。いきなり、…ですからね。むしろ、そう…私の事を疑るのも不思議ではありませんし、…私も疑ってくれた方が助かります」
 真吾の言葉は、その場にいる四人の次の言葉を奪ったようだった…。しかし、

  「俺は、久美ほど、あんたの事、嫌っちゃいなかったがな…」ナウが口を開いた。
   真吾が笑みで細めていた瞳を開ける。深紅の瞳孔に、ナウの影が映り、影はナウと同じように口角を上げた薄ら笑いの表情を見せる。


    「あんた、13にしちゃ、達観すぎね?」

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