=第3章・第14部=
原線路界町

 

「真吾君、お帰りなさい」会席となっている大居間のふすまを開けると、鶏のから揚げ辺りを大量に盛った紫色の長髪の女性が振り返り様、入ってきた五人に声をかけた。
 その女性は白衣姿なものの、その白衣の下は、赤い光沢を放つ際どいラインにまで食い込んだボンデージというなかなかに扇情的かつ冬には風邪必須とも言わんばかりの露出具合で、又、顔に歳を感じさせるほうれい線が見えるものの、肌艶はみずみずしく、指をそえればしっとりと吸い付き、むっちりと包み込んでいく弾力を持つような色白感を見せていた。
 その女性の姿に、奈々美は「ママ!」と言い、久美は「智恵美先生」と、声をかける。
 女性ー智恵美は、そんな二人の声に「あら」と言いつつ、体の向きを変えてみせると、前の開いた白衣の中で衣装に収まりきらないかのような乳房がプルルンと震え、ポヨ〜ンと縦に動いてみせる様に、「相変わらずな格好ですねぇ、智恵美さん」と、ナウがちょっと乾いた笑いを見せる。
「あら、奈右闇。この格好でいると、保健室に来る男子生徒はすぐに元気になるんだし、良いじゃない」
「まあ、そらまあ、んねぇ…」
 ナウの言葉にちょっとだけご機嫌損ねた智恵美の態度へ、…だいたいの男子生徒が仮病で保健室に行っている事実…を、とりあえずは知っているナウは視線を泳がせながら、さらに乾いた笑いを見せ、軽く奈々美の耳元に口を寄せた。
「なあ、奈々美よ。お前からも、ちっとは言ってるのか?」その耳打ちに、菜々美がほえ?っと、横目でナウを見た。
「あんな寒々しい恰好、冬場はきついだろうが?」「なんで?」
 しかし、そのナウの苦言に奈々美はそう即答する。…だから、ナウも少々渋い顔をしつつ、無言で引き下がった。
「まあまあ、さあさあ、みんな」料理を机に置いた智恵美が再び振り返り、手をたたく。
「集まった事だし、さっさと座りなさいな」

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