=第3章・第16部=
原線路界町

 

「久美も、帰ってたの?」
 テーブル前を見ていた久美の頭上より声が届き、彼女は振り返ると、にっこりとして、「ただいま、母さん」と答えてみせる。
 ふすまから、新しく女性が、手に料理皿を抱えた状態で入ってきていた。久美の母親という彼女の衣装は、平凡な水色のワンピースなのだが、髪型については、この部屋にいる人の中でも異彩であろう。金髪のボブカットなのだが、左目よりの前髪の一部を赤メッシュに染めており、智恵美とは別の意味で、若作りをしている感が見えてもいた。
「これで、みんなかしらね?」「そうですね」
 彼女が入ってきたのを確認した智恵美が、一度周囲を見て、久美の母親に声をかけると、彼女はにっこりと返答する。
「じゃあ、食事を始める前に、まずは自己紹介をお願いできるかしら?冬也」
「分かりました」

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