=第3章・第18部=
原線路界町

 

「は〜い、私は奈々美。九白奈々美で〜す」
 向こうの挨拶が終わるや否や、右手を振り上げ、はいは〜いと声を上げるのに、久美は「…、ふう。奈々美は…」と、独り言ちてから、
「水沢久美です。よろしく願います」
「室戸奈右闇」
 久美の挨拶の後、けだるそうな感じで自己紹介する様に奈左水も「ナウも、もう少しちゃんとなさい」と毒づいて、
「室戸奈左水です。以後、お見知りおきを」と、済ませた。
「さて、食事にしましょうか。…の前に」席に座る各々の紹介が終わった後、智恵美が会を進めかけて、不意に歩き出し、後ろに座る真吾と美矢の背後に回る。
「あなた達も前に行きなさい」
 智恵美の言葉に、少々二人は戸惑ったのか、各々を見て、冬也を通眼で見て、それから、智恵美の顔を見る。
 その様に彼女は微笑みを浮かべて、「ここでは、こういった事の方が失礼な行為に見えるのよ。遠慮しないで前に行きなさい」と、二人を諭したのだった。

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