=第3章・第19部=
原線路界町

 

「そうだわ」
 食事のほどがある程度、…といってもその半分ばかりは奈々美の胃袋にと消えているわけだが、それは他所に置いといて、…食事のほどがある程度進んだ頃、智恵美が久美達の方を見て、声をかける。
「真吾君に廊下で会ってるのなら、聞いているかと思うけども、真吾君と美矢さんは転校生という事で学園にも転学するのは知っているわね」
「ぅふん!」
 返事をしたのは、リスのようにから揚げを頬張り、もちゃもちゃとしている奈々美、に「行儀の悪い事はするな」と久美が頭頂部にチョップをかます。
 目の前の奈々美の有様に、少々苦笑いを浮かべつつ、お客様の手前なので「…、おほん」と咳払いして、取り直した智恵美が本題を切り出した。
「奈右闇、久美、奈々美。明日の休みなんだけど、二人の入用品を買いに、一緒に行ってくれないかしら?」
「ぅえ、!」
 智恵美の言葉に、ナウがさも嫌そうに声を上げる。しかし、智恵美も分かっていたようで、にっこりとした表情を添えて「カード貸すわよ」と付け加え様に、「喜んで」と変わり身早く、ナウがニコヤカ〜にするもので、奈左水はやれやれと軽く頭を抱えてみせる。
 それを確認した後、智恵美が「後、二人にもう一つお願い」と、さらに言づける。
「奈々美の食べた分は控えてね。後で、お小遣いを引いておくから」
「ぇぇぇええええええ〜〜〜〜え゛え゛え゛え゛え゛ヱ〜〜〜〜〜!!?!」
 今度は奈々美が、ただし、家を揺るがしかねない大絶叫を上げる。が、智恵美はにっこりとした、…ほうれい線がくっきりと浮かび上がるほどの引きつりと深い影が目元にくっきりと浮かぶ笑みに、左目上側の髪留めピンであらわになっている額には数個の青筋が浮かぶ…、微笑みを向けた。
 そして、「奈々美」と、柔らかく優しく温和な…怒り沸騰の声色で、智恵美が、奈々美の正面を見据える…。
 それから、おもむろにその右手で、もうから揚げのかの字も無くなったぽよぽよんな頬を、むにゅり、と親指と人差し指で挟んで…

  「[Rain-Bow]に久美の連絡を入れた後、…また、お店の方から電話があったのよね。…ナイヨウ…キキタイ…??」

 (の3の;)…な顔の奈々美。

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