=第3章・第24部=
原線路界町

 

「お前!」ナウの言葉を切り裂かんまでの怒号を上げたのは、美矢。だったが、冬也はいさめるように顔を彼女に向け、ゆっくりと「真吾の方に行きなさい」と、諭した。
 その言葉に、中腰にまで立ち上がり拳振り上げかけた美矢は、泳ぐ拳をグンっ振り下ろし、掌に爪食い込ませ、上仰ぎ見、歯軋るのをやめて…から、立ち上がる。
 その後、足音はないが、力強い踏み込みで歩きだし、ナウの横側をすり抜ける際に、「父様に何かあったら、殺す」と毒づき、廊下にと出て行った。
「娘の非礼、お詫びします」
 足音が聞こえなくなった頃、冬也はナウに詫びたが、ナウはイヤイヤいいですよと笑う。
「なに、できた娘さん、それに真吾君も同じく、ですね。いやはや、俺なんか、親にそこまでの敬意、払った事もないのでね。ぜひとも、爪の垢でも煎じさせていただけませんか?」
「ナウ!」
 さすがに、皮肉めいてる言葉なので、奈左水がナウを一喝する。それにも、へいへい。とした態度でかわしたナウだったが、…その目は笑っておらず、…テーブル向かいに残る三人、というよりも、冬也にと視線を向ける。

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