=第3章・第31部=
原線路界町

 

「…その格好でいいの?」
 腰ひもを再度絞り直し、手足の緩衝材入りのグローブの具合を確認する久美が、対峙する真吾に問いかけるが、麻服姿の真吾は「構いませんよ」と言い、手足を楽にした立ち姿で、彼女の手合いを待っていた。
 ただ、自然体の立ち方というのか、普通に今からお茶をするような、危険性を感じさせない真吾の雰囲気に、…軽い怒気を覚えつつ、久美はスッと、右半身を前に、構えをとる。
 二人の状態に、目配せを送る智恵美。そして、ゆっくりとその右手を振り上げ、「はじめ!」振り下ろした。

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