=第3章・第32部=
原線路界町

 

  一呼吸の間に下半身に力を入れていた久美が蹴り足で跳ね、その間合いを一気に詰める。それと同時に、引いていた左拳を真吾の胸元に向けて、繰り出した。
 「パシンっ」と、乾いた音が響き、…いつの間にか、胸元にかざされていた真吾の右手の平に、彼女の拳が収まっている。
 そう、…その瞬間、久美は違和感を感じたが、左を引き、右の拳を牽制的に顔面へと見舞う。
 が、それも「パシンっ」と、真吾の左手の平に収まった。
 再度伝わる、手応えの違和感に奥歯を咬み、距離をとると見せかけた一歩引き、から左の膝蹴りを彼の鳩尾めがけて、かちあげる。
 「ズシンっ」とした手応え。だったが、再び、彼女の膝蹴りも、真吾の右の手の平に収まっていた…。

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