=第3章・第38部= |
「あなたもバカだけど、アレはさらにバカね」事の終わりに、美矢は鼻で笑う。 「そうね」崩れる久美の姿に、智恵美も言葉をこぼした。 「相手の実力を直感的に捉えれる力もまた実力ね。彼女にはそれが無かった」 「まったく、自分の力を過剰評価しているバカは嫌いだわ。…よかったじゃない、これが実践でなくて」 「そう、実践ではないのよ。だから、真吾君は了承した」 美矢が高らかとバカにする一方で、智恵美はふっと笑った。 久美の口惜しさを我が身の如き感じて憔悴感を覚える奈々美と智恵美の一言で眉が上がり、何かに気づく美矢が、久美と真吾を優しく見つめる智恵美に視線を向ける。 「久美は強かった…だから、強かったからこそ、真吾は本気を出し、受け止めた…。これから起きるであろう事から、彼女を守るために」 智恵美の視線の先には、寸足らずで、膝をつかせてしまったものの、崩れ落ちぬようにと、胸元に久美を受け止める真吾の姿があった。 |