=第3章・第42部=
原線路界町

 

「久美は、強いんだから。本当に、強いんだから。!だから、あなたに負けてない!」
 聞けば、ただの負け惜しみである。久美がその場にいれば、さらに打ちのめされるかもしれない、負け惜しみにしか聞こえない、奈々美の叫び。
 それは寒空に響き、…微動だにしない真吾の耳にも入ってるだろう…。けれど、真吾は動かず…。
 ただ、奈々美が息が少し落ち着いた辺りで、真吾は口を開いた。「その通りですよ」と。
 真吾の言葉に、奈々美は眼を見開いた。そして、軽く…残った右目が奈々美に覗き込める位置にまで顔を傾け、彼は微笑んで、言葉を続けた。
「彼女はとても強い…。とても強い人ですよ」

次に進む/読むのを終了する