=第3章・第44部=
原線路界町

 

「それは、悲しい事なんですね…」
 真吾の言葉に奈々美はポツリと呟きを返す。…それに真吾は静かに驚きを示し、空を見上げた。
「悲しいか…。そんな風に考えもしなかったな…」
 真吾の言葉に、奈々美はもう一言言いそうになったが、それよりも先に、「久美さんの事ですが、」と、真吾が切り出す。
「先ほども言いましたが、彼女は強いですよ。そう、強さで言えば、並みの男性など相手にはならないでしょう。さすがは智恵美さんのお弟子さん、というべきですね」
 そう褒めてくれる事に、奈々美は嬉しさ半分、ただあの試合を見れば疑いも半分、…で、真吾の言葉を待ち、次に放たれた彼の言葉に、息が止まった。

  「けれど、その強さは人を殺せる強さではない」

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