=第4章・第2部=
始まり

 

「こちらへどうぞ」
 と、いかにも豪邸のように扉を開けてみせるが、その扉は、うだつの上がらないサラリーマンが奮発し、30年ほどのローンを組んで建てたような、二階建の民家である。
 通常ならば、違和感しかない光景に、来訪者は気にした様子もなく、彼女の言われるがままに、家の中に通され、そのまま、二階にと案内された。
「マスターをお呼びいたしますので、しばらくこちらにてお待ちください」
 二階の誰かの自室のような小部屋に通され、来訪者は彼女の言うままに、勧められた丸椅子に鎮座し、会釈をして、部屋を後にする女性を見送った。
 しばらくして、「やあやあ、待たせたね」と、ザンバラに蒼長髪に[BANDIT]のバイザーを付けた赤い詰め寄り制服姿の室戸奈右闇こと、ナウが姿を現した。

次に進む/読むのを終了する