=第4章・第15部= |
ところが、言葉を投げかけられた当の本人である奈々美は、実にあっけらかんとしたもので、ケラケラと笑いもしていた。 「昔は昔。今は今。昔の事をウジウジグダグダジメジメと掘り返すくらいなら、そんなもん捨て去って、今を大切にすべきでしょ」 そう一時、笑うように言っていた奈々美だったが、すっと表情を収め、視線を久美側に向け、…ただ、久美を見ているのではなく、久美の向こう側の遠く遠くを見つめるよう…、に、ポツリと最後に呟いた。 「それに、真吾君は守るためにしてたんでしょ、…自分の大切な物を傷つけないために、…自らを傷つけてでも」 |