=第4章・第29部=
始まり

 

「そう見えるだけの同じ時間の平行世界だよ。よくタイムマシーンなんてので、過去未来を自由に飛び回るなんて考えるだろうが、時間は常に一定方向で、そして、今しか示さない。過去も未来もない。あるのは、現在だけだ」
 ただ、奈々美は納得いかないようで眉を顰め、ナウを見ている。
「仮に、過去に行けたなんて言ったとする人がいれば、…それは特に酷似した平行世界にたどり着いたにしか、過ぎない。過去の自分にあい、過去の自分に触れ、タイムパラドックスなる現象は起きるはずもない。なぜなら、平行世界はまったく同じ共有性を持つもっよも遠い隣人だ」
 と、ここまで熱弁していたナウが「…あ〜、すまない」と、視線を漂わせる。
「ムキになってしまって、話が横にそれてしまった。いやはや、…面目ない」
 ナウは素直に謝罪し、「話を戻そう」と言った。

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