=第4章・第36部=
始まり

 

「…へぇ、驚いたな」
 ATMを前に、カードを入れかけたナウが振り返り、美矢を見つつ、皮肉めいた口調で言葉を続ける。
「俺達を警戒し、さらには馬鹿を見る目で見てた美矢君がそういう事を言いますか」
「…そうだな、お前は胡散臭いし、そこの二人は馬鹿だ。自分の実力も分からない馬鹿と実力さえ判断しようともしない馬鹿だ」
 ナウを見た後、横目で久美と奈々美を見ながら、毒づく言葉を漏らす。…が、「でもね」フンっと鼻息を入れた後、ナウを見る。
「この馬鹿二人は、この安全な国でヌクヌク育ったせいでなった馬鹿だもの。仕方ないわね。…そこは、笑い種だけども」
 …、一呼吸おいて、美矢が呟いた。
「お兄様を労わってくださった事、その心は馬鹿にはしないわ」

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