=第一章・第三部=

=黎明の証より来る日=

 

 朝靄が消えはじめた山間部…辺りを見回せば、生徒達が集まり始めた。
 そんな学校に賑わいが生まれた頃、キンコォーン…キンコォーン…キンコォーンと、チャイムが鳴り響き、学校の開校を告げた。
 そんな中を隼人は歩いていた。相変わらず、ふらふらと…
 すると、不意に「よぉ、はーちゃん!!」という声と共に、隼人の後頭部を何かが直撃する。一瞬もんどりうつようによたつき、膝を付く隼人。
「相変わらやな、そんのボヘ〜ッておんも、もうちぃっとハキシャキしにぃやぁ」
 続いて降り注ぐ訛りの聞いた言葉。それに彼が振り返ると見慣れた浅黒い肌の少女が鞄を振り下ろした格好で立っていた。
「ちゃちゃ、なん?わしのおんも、なんぞついとんか?」
「いいえ、おはようございます…つぐみさん」
 いつもの彼女らしい行動に、隼人は諦めにも似た溜め息を彼女に見えないようにいて、膝を払いながら立ち上がる。
「ちゃちゃ、その様子だと…いまだ燕と喧嘩中ちゅうわけか?」
「………」
 彼女の思い出したような問いかけに出てきた幼なじみの名前。それに、彼の顔が少し曇る。
「…まぁ、なんや…」彼女も急変した彼の表情に、勢いを落とした声で気遣いの言葉を捜す。
「いつまでもクヨクヨしててもいかんて…な?はーちゃん」
「………」
「確かにや…その…あいつんの誕生日、忘れとうて出んかったのは良くないがな…だから…」
 言い返しのない隼人の反応に鶫はしばらくあれやこれやと理由を付けて、彼の落ち込みを解放しようとしていた。
「別に気にしてはいませんよ」しかし、…そんな彼女の思いも裏腹に、彼はそれを一蹴する。
「僕が忘れていたのは確かに悪いと思います…でも、もう気にしても仕方ないことですよ…」
 自嘲にも似た呟きが…彼女の心配と自らを労わる為に…彼の口から漏れた。
「なんや、腹くくっとんのか…安心したわ」
 それにたいして、大げさな安堵の息を吐いた鶫は、ガッシッと隼人の首に腕を回し、歩き出す。
「つ、鶫さん…なっ、何…」
「まぁ、クヨクヨがないんの確認したし、ジュースでもおごりぃな♪」
「えっ!」
「わしを心配させたんじゃ、それぐらいしぃな」
「なんでいっつもそうなんですか、鶫さんは!!」
 そう言いながらも強引にズルズルと、彼は一度足を運んだ食堂へとひきずられながら、心の中で少しばかり鶫に感謝していた。
 彼女のおかげで…少しだけ気が晴れたことには変わりないのだから…

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