=第三章・第六部=

昼の白い雲より来る日

 

 空が夕焼けに変わり、民宿へと帰る三人を迎えるように田んぼの中から蛙が大きく鳴き叫ぶ。
「どやった?」
 そんな中、ふと、鶫は振りかえり、隼人とイスカに少し大きめな声でそう尋ねてきた。
「…そうですね、」隼人は面を上げて、笑顔の鶫を見る。
「海で泳ぐ事が始めてだったので…なんていうのか、感動しました」
「そげか、そげか」隼人の言葉にうんうんとうなづき、「…で、イスカは?…どやったんじゃ?」と、にんまりとイスカの方を見たが、イスカはただ無表情に見返してくる。
 もちろん、どんな顔が帰ってくるか予想してた鶫は苦笑を洩らし、彼女の額を軽く弾いた。
「も少し可愛げにせいやな。はーちゃん、見つめてた時みたいにの〜」
「………」
 鶫の茶々を入れるような言い草にイスカはきょとんとしたように眉をあげて、…鶫と一緒に自分の顔をうかがっている隼人の顔を見た。
「どうだった?イスカさん」
 隼人もまた、彼女に問い掛ける。

 ふと、イスカの足が止った。隼人と鶫も少しだけ歩を進めた後、足を止めた。
 イスカを見つめる二人に…彼女は目を柔らかく細め、小さく微笑んでみせた…。

「ちゃちゃ」鶫は、その表情に円満な笑みを浮かべ、イスカの手を取った。
「良かった」隼人もまた、安堵の表情を見せた。
 二人を見つめるイスカに「はや、帰ろや〜、おなか、へりまくりや〜」と、鶫が手を引いて歩き出す。
 隼人も、そんな二人の後をついていくように足を進めた。
 鶫は学校では見せた事のない笑顔を見せながら、イスカの手を引いていき、少し後を歩く隼人に気付いたように声をかける。
「はや帰ろうや〜」
「…そうですね」
 隼人は、鶫にせかされる様に歩を進める。
 一緒に歩いていた彼女、イスカもまた、隼人の姿を待っていた。
「…、早く帰ろう」
 イスカの横に並ぶと、彼の手に彼女の手が触れ、優しく握られる。
「…なんや、」イスカをはさんで反対側にいる鶫が少し照れながら、隼人に声をかける。
「なんや、はずかしいの。この年での〜」
 隼人も、少し同意するように苦笑を見せると、イスカは、隼人から鶫に視線を向ける。
「まあ、いいわな。な…」鶫は、嬉しい困り顔を見せて、イスカの手を引いた。
「そうだね」隼人も優しく微笑んで、鶫と一緒に歩き出す。
 イスカはそんな二人に軽くうなずいてみせ、引かれる様に歩きだした。

 そんな三人を温かく迎えるように、陽光が降り注いでいた。

 


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