=第四章・第四部=

陽炎う遮光より来る日

 

「ちゃちゃ〜、は〜ちゃん」
 鶫が、駄菓子屋の店内でイスカとくつろぐ隼人に声をかけながら、その二人に歩み寄る。
「長かったですね」隼人は軽くため息を交えながら、鶫の後ろを歩く雀に、視線を向けた。
「雀さん、大丈夫だった?」
「えっ?」
「変な事、言われなかった?鶫さんのことだからね」
「…え、えっと、〜お!?」
 隼人の質問で窮し、しどろもどろになっている雀に、突如、彼女の首元へ腕をまわした鶫が、「ちゃちゃ、雀も今日からお泊まりッてことやねん」と彼女に代わって、嬉しそうに答えてみせる。
「えええ!」
 その鶫の言葉に目を白黒させる雀を見て、本当は別の事だったんだろうと思いつつ、隼人は苦笑を混じらせながら、首を横に振ってみせた。
「鶫さんが、そう言い出したら、言う事きかないよ、あきらめた方がいい」
 助け舟を出してもらえると思ってた隼人の意外な答えに、さらに驚いた雀があたふたしながら、鶫に問いただす。
「で、でも、家への連絡が、…」
「なんや、ちょっと旅行が長引いたってことにしたりゃ、いいやんけ」
 そのあまりに楽観的な解答に、雀は押し黙る。正直、雀も…この・・鶫には、何を言っても、きかない事が分かったのだろう。彼女は少しだけ眉をひそめて「分かりました」とだけ、あきらめたように呟いた。…すると、首元にまわっていた鶫の腕がパッと放される。
 首元が自由になった事でか、それとも気疲れでかは分からないが、大きくため息を吐いてみせる雀に、隼人が笑いかける。
「まあ、いいんじゃないかな?雀さん。こういう所でのんびりするのも…悪くないよ」
「そやそや、たまには写真なんて忘れて、ぱ〜っと遊ばにゃ損ってもんや。あ、旅費とかきにせんでええぞ〜。全部わし持ちやからな〜」
「実家…でしょ」
 楽天気ままにはしゃぐ鶫の言葉へ、思いもかけないイスカの突っ込みが入った。それに対して、鶫と隼人はギョッとして、イスカを見た。雀もそれにつられて、イスカを見てしまう。
 当の本人であるイスカは何事もなかったように、隼人に買ってもらったアイスをシャリシャリと食べていた。
「…あははは」
 隼人は笑い出し、鶫も少々、苦笑いを洩らす。

 そんな雰囲気に雀も、ちょっと困ったような表情で微笑みほほえみを見せていたのだった。

 


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