=第四章・第七部=

陽炎う遮光より来る日

 

 太陽の光も傾きだした正午過ぎ。買い物から帰ってきた鶫が隼人を見るなり、「ぎゃははははは!」と馬鹿笑う。
「…そんなに変ですか?」
「変じゃなか、変じゃなかけど…ぶっふ〜ぅはははははは!」
 あまりの笑い方に憮然とした表情を見せる隼人。それに、彼女は手の平を振って否定するも、…こらえきれないように再び笑い出した。
「ぶっひゃはひゃひゃはひゃは〜、った〜!!」
 そのあまりに笑う様に、鶫の母親が、その頭を手の平でおもいっきり叩き落として、一喝する。
「おまんは、わらいすぎやてな!おまんは!」
「えっと、やっぱり変ですか…」
 後頭部を抑えうずくまる鶫と怒り足りない母親に、隼人の半歩後ろに立っていた雀が、涙目でおずおずと尋ねてくる。
 その言葉が耳に入ったのだろう。痛みなど、どこ吹く風に、鶫はすいっと立ち直ってみせて、「ちゃちゃ、変じゃなか。変じゃなかと」と、満面の笑みを見せる。
「は〜ちゃんの短髪なんぞ、見たことないけな〜。それがおかしかよ」
「すっきりした感じやで、悪かなかよ」
 鶫の弁解に母親もうんうんと同意のうなずきを見せてくれたので、やっとそこで、雀は胸をなでおろし、自分を見返してくれていた隼人に「よかったです」と、微笑んでみせる。
「は〜ちゃん」彼女へ微笑みを返している隼人に鶫が声をかけた。
「しかし、なんや…いきな〜、切〜なんぞ、な〜んあったんか?」
 そんな鶫の質問に、隼人は一度視線を伏してみせてから、…朗らかな笑みを浮かべ、鶫を見返した。
「この旅に連れて来てもらって、鶫さんとイスカさんとの暮らし、雀さんとの一時を過ごして…思ったんです」そこで言葉を区切り、間を空けてから、隼人は口を開く。
「過去のことは過去であって、僕はいつまでも…その場で歩みをとめる事はできないって…歩いていくために過去にあった重りを…重りだけを捨てるために…」
 隼人がそう言葉を続けると、鶫の表情からチャラけた雰囲気がなくなり、軽く視線を逸らしてみせた…のもつかの間、ニタニタした笑顔を向ける。
「ちゃちゃ、なんぞ重いテーマやな…」
 その軽口とも見える鶫の言い方に、隼人はただ、苦笑を返した。
「そうですね。でも、そこまで重いものじゃないですよ。後、もうそろそろ…うっとうしいと思ってたし…いい機会だと思って」
「そりゃいえるの〜、見る方もうっとうしかったわ〜」
 隼人の言葉言葉にうなずく鶫に、相変わらず無表情なイスカ。が、思い思いままに隼人の方を見ていた。
「やっぱり、…変かな?」
 隼人は短髪になった頭をなでながら、イスカに苦笑交じりに問いかける。
 雀もその答えが気になるのか、イスカに視線を向けた。

 無表情だったイスカは、その口元を軽く緩めて、呟いた。

「悪くない」…と、

 


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