=第五章・第一部= =夕日に赤く染まる時より来る日= |
| プルルル…プルルル…カチャ… もしもし、四島隼人ですけど…。夜分遅くに申し訳ありません。 いえ、はい…しばらく知り合いに誘われて旅行の方に…はは、おばさん、どうも…。 あ、はい…燕さん…燕さんに変わっていただけますか?はい…、すいません。 … あっ、つ!………うん、ごめん…その、鶫さんにね…そう、無理矢理だよ…うん、無理矢理…ね。… まあ、それなりにね…えっ、お土産……忘れてた…ごめん…。 … あぁ、そうだった。燕さん、申し訳ないけど、今から来てくれるかな?… そう、…今からだよ…君に少しお願いしたい事があって… うん、…きてくれる?…そう?…ありがとう… ん、ああ、手ぶらで良いよ。うん…、それじゃ、そういう事で… また、後でね… … … … 隼人が電話をして数分後、…少しだけ落ちつきなく電話の周りで足踏みをする彼の耳に、ピンポ〜ンという玄関のベルの音が入ってきた。 誰が来たかは一応、知ってはいたが、彼はとりあえず覗き窓で確認をする。 しばらくぶりに見る…茶色のポニーテールに…少々きつめの釣り目… 彼は覗き窓から眼を離し、一息だけ入れ、ノブを回した。 …ガチャン… ゆっくり…ドアを開けると、その前に立っていた彼女の顔が隼人の目に飛び込んできて、 それと一緒に石鹸の優しい香りが鼻腔をくすぐった。 ちょっとドキッとしながらも、隼人は平静さを保ちながら、…主張し出した胸を包む白いタンクトップと紺のショートパンツ、サンダル姿の彼女、鳳沢 燕の顔を見て、「いらっしゃい」とだけ、答えてみせる。 「えへ、着いたよ…」それに少しだけ照れるように彼女も挨拶を返しつつ、目を丸くした。 「…って、隼人…、髪…切ったの?」 「え、あ…うん」そういえば、という感じで隼人は髪を掻きあげてみせる。 「やっぱり、変かな?」 隼人の苦笑を交えた言葉に燕は首を軽く横に振り、「そんなことないよ」と、笑ってみせる。 「まあ、こんな所で立ち話もね…、とにかく、中に入ってよ」 そう言って、隼人は身を引き、彼女を家の中へと促す。 「そうね、そうよね。じゃあ、お邪魔するわ」 燕は、もう一度嬉しそうに笑い、隼人に誘われるままに歩を進める。 「おかえりなさい、隼人」 すれ違い様、…燕はそう一言だけ呟き、玄関口を上がった。 その言葉に隼人はただ、人差し指で鼻下を軽くこすってみせ、玄関のドアを閉めたのだった。 |