=最終章・第一部=

再び訪れる朝焼けの日より来る日

 

 昼下がり、…空は快晴にして、風も穏やかな午後。キンコ〜ンとドアベルの鳴り響くマンションの一室。
 そして、警戒感もなく開く扉の前に、スーツ姿の鶫の姿があった。
「訪問販売やで〜。って、なんや、イスカかいな…」
 何か思惑(おもわく)あっての口ぶりで語ったのだろう彼女だったが、ドアを開けた相手に、期待外れだったとばかりに拗ねた唇を見せてしまう。ただ、そんな彼女の態度に対して、「何?」と、相手は平然としたものだった。
「何って、おまん、遊びにきたんやないかい。あかんのか?」
 無地のTシャツ姿にGパンという軽い服装のイスカの反応に、鶫は続けて「相変わらずやな〜」と、頬を膨らませてもみせた。
「姉さんも、変わらないじゃない。…」
「なんや、言うようになったな、おまんも」
 平然な顔で返答を続けるイスカの態度に、鶫は溜め息を吐きつつ、彼女の顔を見る。すると、イスカは「本当、お互い様ね…」と、微笑みを返してきたので、鶫も答えるように軽い苦笑いを漏らしながら、頬を人差し指で掻いてもみせた。
「おばちゃん、っだ〜」
 ひとしきり、微妙な笑みを返しあう二人の元、イスカの足元から、小さな顔が飛び出して、鶫を指差す女の子が現れた。
「誰が、おばちゃんや〜!おねえさんやろが!!」
 女の子の言葉に、シャ〜ッといきりたってみせる鶫。それを見て、ただただ、楽しそうにケラケラと笑う女の子。
「そうよ、琴璃。おばちゃんじゃないでしょ」女の子に向かって、イスカも諭すように言う。
「おはぐろさんよ」
「誰が、おはぐろや!!わしの歯は、今までも虫歯ゼロやで!!」
「じゃあ、肌黒…か、腹黒…」
「はだぐろ〜、はらぐろ〜」
 ケタケタ笑う琴璃と真顔のイスカに、「なんや、泣けてきたわ〜」と、二人に背を向け、壁越しにしゃがみこんでしまう鶫。
「さあ、琴璃。からかうのはこれくらいにしましょうか?あんまり、変なことを教えるとパパに怒られますからね〜。中でお菓子の続きにしましょう」
「うん、お菓子〜」
 ひとしきり、笑っていた琴璃にイスカが微笑んで部屋の中へ戻るように言うと、琴璃は大きく頷いてみせ、部屋の中へと駆け出していく。
「…なんや、なんや、わしとおまんの扱い、差がありすぎやで…。おなじ姉妹やないかいな…」
 二人のやり取りの間、ず〜っと、いじける後姿を見せていた鶫に、イスカが…クスッ…と、笑った。
「姉さんも早くお入りなさい。お茶、出しますよ」

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