=第一章・第九部=
=1日目=

 

「どう、お暇だった?」
「暇も暇よ。奈々美も今日は、絵里奈達と一緒に、ショッピング。…私もいけばよかったわ」
 通された仕切りのある応対用のソファーへ座るや否や、ふは〜っと一息つく久美に、クスクスと微笑む春日と呼ばれる少女。
「でも、今月、ピンチなんでしょ?しょうがないじゃない」
「…」
 春日の言葉に閉口しつつ、久美はケーキを入れた箱を開き、中に仕舞ってあったケーキを取り出す。
「コーヒーでいい?、紅茶?」
「紅茶」
「ふふ、…で、そっちは?」
「え?」
「…ほら、どっちよ?ケーキ、いらないの?」
 不意に二人だけの話になりそうだったので、なりを潜めていた昭汰だったが、突如振られて、言葉を漏らす様に、久美は溜め息をつきつつ、春日の言葉を復唱する。
「…じゃ、ぁ…、コーヒーで…」
「店でもコーヒー飲んで、ここでも?…コーヒー通?」
「そこは好き好きでしょ。久美さん。…もう」
 二人のやりあいに持ち出された事に、少しだけむっとしつつも、閉口を保つ昭汰に、久美は再度、溜め息をついてみせる。
「あんたさぁ、芸人なら、もう少し、愛想良くした方がいいよ」
「…」
「もう、久美さん。そういう言い方をしたら、誰だってブスっとしますって!…分かってます?」
 コーヒーとお盆を持って戻ってきた春日がそんな二人の立場に、言葉を挟み、久美の言葉をチクチクと刺す。
「まあ、いいわ。春日、お父さんは?休み?」
「ん〜、休みといえば、休みね。自分休暇。私が留守番よ」

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