=第一章・第十部= |
二人の会話に、耳を向けつつ、昭汰は出されたコーヒーを口につける。 先程の喫茶店で飲んだものに比べれば、至って普通のインスタントもの、… いつも飲みなれた…ものだった。 「とりあえず、イベントでいいのかしら?用紙持ってくるわね。」 そう言って、春日は立ち上がり、事務所のほうへと向かう。 「…」 「何不思議そうな顔してるのよ?」 「いや、彼女、役場の人?」 「の、娘ね。休日の役場の対応は、だいたい彼女がしてるわよ?」 久美の言葉に、昭汰は軽く目を見開き、…彼女を見ると…、それに答えるようにニタニタ笑う。 「どうせ、こんな田舎よ。休日に来るなんて、だいたい野菜持ってくるおばあちゃんくらいよ」 「だけど、…職務怠慢…というか、…一応、」 「ああもう、言いたい事はわかるけどさ、…そんなん、大きな町でいいじゃない。休日、歩けば、みんな知った顔ばっかりな町よ。たかが知れてるわよ」 久美の面倒くさそうな言い方に、…昭汰は閉口するが、「…そんな事で、いいのかな」と、小さくうそぶいても見た。 「ま、昭汰さんの言い分は、私も賛成かな?私もたまには外に出たいもの」 「じゃ、一緒に出る?」 用紙を持って、戻ってきた春日に、ニコッと笑い提案する久美に、少しだけ眉をひそめながらも彼女は、首を横に降った。 「でもやっぱり、誰かいないと困るでしょ…、役場に」 |