=第一章・第十三部= |
「そういえば、どんなマジックを披露してくださるの?」 あれから、春日が自宅に電話をして、1週間の間借りをすることが決まった昭汰。 最後まで、「変な事したら、許さないぞ」宣言しまくる久美も帰り、春日と共に、彼女の自宅への家路に着いた。 「テレビで…してるようなものじゃないさ。…そうだね、ちょっとした家芸みたいな…」 「いいじゃない、そういうの出来るのって、素晴らしいわ」 昭汰の少し伏せ目がちな言葉にも彼女は喜び、彼の顔を見る。 「今じゃ、テレビでなんでも、って感じだけど、…やっぱり、目の前でしてくれる方が楽しみだもの」 「…小学生くらいが楽しむような、芸かもしれないよ。本当、…」 どこかのマジックについて学んだ訳でもなく、本で見知ったものを、…自分なりにアレンジしたものを加えての…たどたどしい演技。 見もしないで期待されることには、少々、彼にとっては重荷ではあった。 「…、久美の言い方じゃないけど、…もう少し、自信をもたれたら?」 不意に、春日がそう持てる。 「まだ、自分で思うほど腕前に自信がなくとも、それを商売に選ばれてるんでしょ?なら、もっとプロ意識を持って、望まれたら…?」 「…」 久美と同じことを言う春日に、気持ち落ちる昭汰。 「そうだね、…確かにそうなんだよね」 そう、…彼もわかっていることを言われたので…、夕日で染まる空を見つめ、呟いた。 「確かにそうだよね…」 |