=第一章・第十四部= |
「ただいま〜」 春日の声が玄関先に響く。 その家の形式は、昔ながらの一軒家というか、昭和の匂いのする赤トタン屋根に薄っぺらい木板の壁、そして、見た目的には立て付けの悪そうなガラス戸に…窓。 「…、風格ある家だね…」と、つい口に出してしまう昭汰へ、春日は少し驚いたように目を見開かせたが、クスクスッと笑い、「じゃあ、あなたの手品で立派にしてもらおうかしら」と、うそぶいてみせる。 「母さん〜、いないの〜?」 玄関に入れば、粗砂利のコンクリートの土間とこれまた古臭さの漂う板間の廊下が伸びていた。 その玄関口で春日が声を上げるも、返事はなかった。 「…お客さんが来るって、…もう、」 「…出かけ?かい…」 「たぶん、買出し…、急に泊まる人いるなんて言ったから、気分よくしたんじゃないかな」 「そんなもん…なのか?」 昭汰の言葉に、苦笑を漏らしつつ、靴を脱ぎ、板間に上がる春日。 「そうだ、私の名前、春日 兎萌。春日だと、両親も顔上げちゃうから、兎萌って呼んでね」 「あ、ああ」 彼女に習い、板間に足を上げた昭汰は、少しだけ、驚き眼で言葉を漏らし、微笑む彼女を見返した。 「帰ってくるまで、今でテレビでも見てましょう」 「そうだね…」 |