=第一章・第十五部= |
「して、昭汰君は、どこから来たんだい?」 …春日の両親もあれから一時間ほどで戻り、兎萌と母親が台所に向かってまもなく、テレビの音を消すような声でもって、ビール瓶を傍らに、彼女の父親が話しかけてきた。 「……、島根の…」 「島根…?ああ、ああ、島根ねぇ。…また、えらい長旅だね。いやいや、修行かな」 たぶん、彼の口ぶりから…島根がどこか、なんて気づいてないだろうなぁ…、と昭汰は思いつつ、…「…ええ、そうですね」とだけ、返しておいた。 「ところで、昭汰君。手品師なんだって?」 「ええ、一応」 「何か、一つやって見せてくれないかね?」 「そうですね…」 やはり、と思いつつ、昭汰は、少し顔が少し赤らんだ父親の顔を見ながらも、口元見せないように溜め息を吐いた。 そして、おもむろにポケットに忍ばせたトランプを取り出してみせる。 「じゃあ、トランプ芸でもいいですか?今、手元にあるものは、これくらいですので」 |