=第一章・第十六部=
=1日目=

 

「あなたの選んだカードはこれですね?」
 昭汰の言葉に、父親が「ほお、上手いもんだ…」と、感心する。
 手始めにみせるカード当て…に、兎萌を含む家族が目を丸くした。
「目の前で見ると、確かに魔法な感じがするね」
「そうだね、これは文化祭が楽しみだね」
 と、彼女の両親が口々に言われると、少しばかり気分が高揚したような、照れくさい感覚が背筋を襲ったのだろう、昭汰が少しばかり、苦みを味わったような照れ笑いをした。
「はいはい、お父さんもお母さんもそこまで。昭汰さんも長旅の後だから、これくらいでいいでしょ」
 そんなまじまじとカードを見つめる二人を軽く手で押しておしのける兎萌が、昭汰を見る。
「今日はゆっくりされるといいよ。長旅だったでしょ?」
「…、まあね…」
 彼女の言葉に、昭汰は少し思案したしぐさを見せたが、…簡単な笑みだけ返し、小さく答えた。
「母さん、居間の方に布団出しとくね。それと、父さんも今日は早めに寝てね。昭汰さんの迷惑、かけないでよ」

次に進む/読むのを終了する