=第一章・第十七部= |
時間にして、何時ぐらいであろうか…。時計を見るのも億劫になるほどの夜。 なんだか、寝付けないでいた昭汰は、間借りした居間より顔を左右に振っていたが、目に映った軒先を見て、体を起こした。 「眠れないんですか?」 外に出て、しばらく…そんな昭汰に声をかける者がいた。 「星空が綺麗だな…と、思って…」 昭汰は、そう…自分に話しかけていた兎萌を軽く見た後、再び空へと視線を向けた。 「あまり街のほうだと、こういった光景。目にしないからね…」 昭汰の横に立った兎萌も習い、空を見上げて…「そうですか…」と、呟いた。 「私、この町から出かける事なんて、ほぼないですから。これが普通ですもの」 「でも、ここの町は街灯も少ないね…。そんな大手の会社の本社があるなんて…、思いもしない静けさだな」 「ふふ、本社があるっていっても、…たいした事はないですよ。事務所自体は、大阪の方だったはず。本社とは名ばかりで、小さな工務店みたいなものですよ」 昭汰の言葉に兎萌は笑い、…それから「そうだ」と、言った。 「じゃあ、明日、いってみます?[ShadowBlain]」 いきなりの申し出に、昭汰が目を見開く。 「そんなに、大仰しい所じゃないですよ。名所もない場所だし、名所っぽい所めぐりですよ」 |